PayPalから誕生したシリコンバレーの事業家集団「ペイパルマフィア」の採用基準
PayPalは、送金システムを可能にすることで金融業界を揺るがすような革命を起こしただけではなく、創業メンバーがのちに「ペイパルマフィア」とも呼ばれるような大きなスケールの資金力と企業力を有する天才的な事業家集団となったことは有名な話です。
今回は、その天才たちが集まる事業家集団となったPayPalの創業メンバーが大事にしてきた「採用基準」に注目して紹介します。
1998年にシリコンバレーで誕生したフィンテック企業のPayPal(ペイパル)
PayPalは、1998年にシリコンバレーでフィンテック企業として誕生しました。
設立時は「Confinity」(コンフィニティ)という社名で、2000年3月にイーロン・マスクが創業した「X.com」と合併し、PayPalに改名しています。
天才事業家集団となったペイパルマフィアのメンバーとは
そもそも「ペイパルマフィア」と呼ばれる創業メンバーについて、どういう人がいるのか知らないという人も多いのではないでしょうか?
ペイパルマフィアとは、一般的には以下の7人を指すことが多く、各メンバーがPayPalの他に、ユニコーン企業(企業評価額10億ドル以上かつ設立10年以内で未上場の企業)を立ち上げ、今ではスタートアップの世界では伝説的な人物になっています。
ペイパルマフィア (創業メンバー) | 創業した ユニコーン企業 | 公式サイト |
イーロン・マスク | テスラ(Tesla) スペースX (Space X) | https://www.tesla.com/ https://www.spacex.com/ |
ピーター・ティール | パランティア (Plantir) | https://www.palantir.com/ |
マックス・レヴチン | アファーム(Affirm) | https://www.affirm.com/ |
リード・ホフマン | リンクトイン(LinkedIn) | https://jp.linkedin.com/ |
ジェレミー・ストップルマン | イェルプ (Yelp) | https://www.yelp.co.jp/ |
チャド・ハリー | ユーチューブ(YouTube) | https://www.youtube.com/ |
デビット・ザックス | ヤマ―(Yammer) | https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/yammer/ |
上表の通り、ペイパルマフィアが創業した企業は、現在では世界中に名が知られる錚々たる企業となっています。
PayPalを離れても繋がりを持ち続けた創業メンバーたち
PayPaの創業メンバーの絆は、退社後も強く残り、それぞれのビジネスの立ち上げを応援し合っています。
その繋がりは、世間からは見える形もあれば、技術連携のように見えない形で現れているともあるといわれています。
Plantir(パランティア)を創業したピーター・ティールは、旧社員の新ビジネスの立ち上げ時には必ずといっていいほど投資しています。
また、Affirm(アファーム)のマックス・レヴチンも、雑誌のインタビューで「PayPalの絆がビジネスを動かしてるんだよ」とコメントしています。
Linkedin(リンクトイン)の創業者としても知られるリード・ホフマンは、著書「アライアンス」で会社組織と優秀な個人の関係を「取引」ではなく「関係」として捉えるための枠組みを提示しています。
筆者もこの著書を読み、様々なトピックがある中で結論は、本当に継続的に発展していくポイントとして、いつか必ず終わりが来る契約で繋がった関係ではなく、フラットで互恵的な信頼に基づく「パートナーシップ」の関係が大事である、と感じました。
つまり、同じ企業内にいるときのみの連携ではなく、「信頼」や「考え方」を共有するもの同士で連携して発展していく考え方です。
PayPal創業期の強烈な採用基準とは
PayPalのように世界中の人間が使うようなグローバルサービスを立ち上げただけではなく、その後も繋がりを保ちながら世界を変えるような巨大企業を立ち上げ続けたペイパルマフィアのメンバーが大事にしていたのが、人を雇う時の採用基準でした。
端的にいえば、その採用基準はただ一つ。「優秀な人材のみで集う」ことです。
マックス・レヴチンとピーター・ティールによると、優秀な人材とは以下のような条件を満たす人材のことをいうようです。
- 極度の負けず嫌い
- 豊富な知識を持つ
- 数ヶ国語を操る
- 仕事中毒
- 卓越した数学力
- 反権的な思想
また、いくつかのインタビューや大学での講話では、以下のような人が一緒に働きたい人だと述べています。
- 職場の机の下で平気で寝て、仕事漬けになることを楽しんでいるような変人
- 博士課程に進んだにもかかわらず平気で退学するような人物
MBA取得者やコンサルタントを経験していた人材は、採用しないと公言していたそうで、一般的な採用基準や世間一般から見ると、かなり外れているように見えます。
しかし、これらの条件が、PayPalから始まりその後も巨大ベンチャー企業を成功させてきたリーダーたちの驚くべき基準です。
PayPalの概略
世界で3億人以上が利用するかんたん安全な決済・送金・送金リクエストサービスを提供する企業です。
商号 | PayPal Pte. Ltd. |
代表取締役 | ダン・シュルマン(Dan Schulman) |
設立 | 1998年12月 |
本社所在地 | 5 Temasek Boulevard #09 – 01 Suntec Tower 5 Singapore 038985 |
HP | www.paypal.jp / www.paypal.com.sg |
PayPalの沿革
1998年12月 | マックス・レブチン、ピーター・ティールらにより、 セキュリティソフトウェアを開発する「Confinity」設立 |
1999年 | 送金サービス『PayPal』を公開 |
2000年3月 | イーロン・マスクの会社「X.com」と合併 |
2001年 | 社名を「PayPal」に変更 |
2002年2月 | ナスダックに株式上場 |
2002年7月 | eBayによって買収され、非上場化 |
2015年7月 | 「PayPal Holdings」としてeBayより分社化、再上場 |
天才事業家集団「ペイパルマフィア」から学んだこと
今回は、シリコンバレーの天才達が世間一般とはかけ離れた採用基準だけではなく、PayPalを離れた後も繋がりを大事にし、それぞれのベンチャー企業でグローバル規模の成功を収め、天才事業家集団「ペイパルマフィア」と呼ばれるまでになった過程を取り上げました。
ペイパルマフィアのメンバーから学べることは、何事も大きな成功の元を創るのは一般常識では理解できない基準があること、そして、志のあるもの同士は、組織や契約の縛りを超えて繋がり続け、互いをさらなる高みに押し上げるマインドを持っていることではないでしょうか。
日本は起業に適さない風土として度々メディアでも取り上げられていますが、少しずつでも一般常識から外れたものを非難・排除するような風潮がなくなり、才能を持った者が次々と現れて、ペイパルマフィアのような天才事業家集団が活躍できるような環境が整うことを期待します。