社会問題解決の起業家集団がノウハウ共有の環境を構築して成長~株式会社ボータレスジャパン
「社会課題解決(ソーシャルビジネス)の起業家集団」株式会社ボーダレス・ジャパン。
「ソーシャルビジネスは儲からない」という固定概念を覆すかのように、2007年の設立から14年で売上高55億4000万円を達成。
グループ全体で35事業を展開し、従業員数は13カ国で1400名を超える規模にまで成長しています。
そのボーダレス・ジャパンの成功の裏にあるのは「事業や会社を超えたノウハウ共有」です。
そのノウハウ共有はどうやって実現されているのか、具体例を用いて紐解いていきます。
株式会社ボーダレス・ジャパンの歩み
そもそもボーダレス・ジャパンとはどのような会社なのでしょうか。
以下は、株式会社ボーダレス・ジャパンの誕生からの歩みをまとめたものです。
年度 | 内容 |
2007年 | 不動産仲介会社として創業(売上の1%を寄付) |
2008年 | シェアハウス事業誕生 |
~2016年 | 新たに6事業が誕生 |
2017年 | ホールディングス化。同年新たに6事業が誕生 |
2018年 | 新たに10事業が誕生 |
2019年 | 新たに16事業が誕生。 |
※2008年のシェアハウス事業は、不動産仲介をする中で家が借りられなくて困っている外国人とのたくさんの出会いがきっかけで誕生しています。
上記表から見ても、一般的な不動産仲介業としてスタートしたものの、そこからソーシャルビジネスを自社でスタートし、2017年のホールディングス化を起点にグループの規模も事業領域も急速に拡大した会社であることがわかります。
ボーダレス・ジャパンが起業家集団といわれる理由
ボーダレス・ジャパンの飛躍を支えている組織体制は、2017年にスタートしたホールディングス体制です。
不動産やサービス、小売、卸売、製造、流通、農林、リユース・リサイクルなど、多岐にわたる領域で事業を推進するグループ各社を、ボーダレス・ジャパンが中心となって支えます。
親会社とも言えるボーダレス・ジャパンの主な役割は以下の2つです。
- スタートアップスタジオ(社会起業家を集め、成功に導く)
- バックアップスタジオ(事業に集中できるように経営をサポート)
スタートアップスタジオは、起業家の募集育成やスタートアップ伴走、マーケティング支援、採用・広報支援などを行っています。
バックアップスタジオは経理や人事労務、法務などの部署や資金調達などのサポートを行っています。
また、ボーダレス・ジャパンのグループ運営は一般的なホールディングスとは一線を画す要素も持っています。
一般的なホールディングスでは、持ち株会社(親会社)と子会社間では上下関係が存在し、親会社は子会社に対して「来期は○百万円、還元すること」といったコミットを求めて、経営に介入することもあります。
しかし、ボーダレス・ジャパンは、グループ会社各社のマネジメントをすることはなく、資金やノウハウをグループでシェアする仕組みをとっています。
ボーダレス・ジャパン代表取締役副社長の鈴木雅剛氏は、「ボーダレスグループは、社会起業家の“共同体”であり、ボーダレス・ジャパンは、いわばグループ各社の相互扶助を促進する事務局なのです」と話しているところからも、ボーダレス・ジャパンがソーシャルビジネスの起業家集団といえるのではないでしょうか。
ボーダレス・ジャパンのノウハウ共有の具体的仕組み
ボーダレス・ジャパンが行っているノウハウ共有には大きく以下の2つの仕組みがあります。
- バディ制度
- 気軽な情報と人のやり取り
バディ制度
まず1つ目のノウハウ共有の仕組である「バディ制度」は、スタートアップの伴走者として、経験豊富な人物が若き社長とタックを組む制度です。
バディの仕事というと、事業サポートやフォローなどを思い浮かべるかもしれませんが、ボーダレス・ジャパンのバディ第一人者作内大輔(さくうちだいすけ)氏はバディについてこう語っています。
「リーダーと毎日のように膝を突き合わせ、同じ目線で喧々諤々と経営について語り合う、正に相棒だ。社長側が『この事業で大切なのはこれなので~』と言ったとしても、バディである私が『ちがーう!!こうだろーが!!』という事もあるし、『作内さんの言ってる事って、単なる理想っすよねぇ!』となることもある。つまり、ガチ。社長の完全なガチパートナーがバディだ。」
このバディ制度のおかげで、理想や情熱はあるが圧倒的に経営ノウハウが不足している若き社長が具体的に走り出せるようになっています。
気軽な情報と人のやり取り
2つ目のノウハウ共有の仕組みは、ボーダレス・ジャパンがこだわって作り上げてきた“思いやりの文化”や“助け合いの文化”から生まれたものです。
例えば、下記は新ブランドの写真撮影の様子が社員ブログで書かれたものですが、会社を超えてグループ間で人やモノが移動していることが見てとれます。
先日、新ブランドの写真撮影を行いました。
実はこの撮影、Sunday Morning Factory のメンバーは、ディレクターの前田だけ。それ以外はみんな、ボーダレスグループの別の会社のメンバーなんです。準備からずっと手伝ってくれたニタやんと、出産一か月前なのにサポートに来てくれたサラさんはバックアップオフィスチームのメンバー。撮影で使用しているベビーカーや雑貨等は、POST&POST社が貸してくれたもの。そして、それを車で運んでくれたのは、社員でもない、サラさんの旦那さん笑。モデルに協力してくれた新規事業立ち上げ中の呉ファミリーは、この日のためにわざわざ大阪から来てくれました。
Sunday Morning Factory 公式 – ボーダレスファミリー、まったくなんてヤツらだ!
また、別の場面では「ノウハウ共有講座」がグループ間で気軽に行われている様子もブログからわかります。
この前のお昼、東京オフィスの10階に、ボーダレスグループの色んな会社のメンバーが集まってきました。さらに多の津オフィスや大阪オフィス、店舗までスカイプで繋いで始まったのは…「SNS講座」!
公式HP – ボーダレスグループだからできること。ノウハウシェアも事業・拠点を超える!
ボーダレスグループのメンバーのためにSNSの販促活用方法をシェアしてくれました。
今回はJOGOOで打ち出してきたtwitter、Instagram、Facebookの施策のうち、高い効果が出たものを中心に施策の詳細をシェア。
普段の業務の中で事業を超えて助け合いが自然発生するのがボーダレスグループ。今回のように、各社の成功事例も盛んにシェアされています。
1人(1社)でやるのではなく、グループでやる。だからこそ、色んなリソースが集まって、成功に向かうスピードが速くなるんだなと改めて思いました。
このように、最も簡単に事業体や会社を超えてグループ会社間でヒト・モノ・ノウハウのシェアが行われる文化そのものが、ボーダレスグループの強みでもあり、社会の役に立つために企業したい若者が集まる魅力になっているのではないでしょうか。
ベンチャー企業がノウハウを手に入れやすい環境を構築して起業家集団へ
今回はボーダレス・ジャパンのノウハウ共有の具体的事例から、同社の成長の裏にある独自の分かち合い・助け合いの文化を見てとることができました。
もちろん企業成長の理由はこれだけではないだろうが、人的リソースや経営経験値が少ないベンチャー企業にとって、ヒト・モノ・ノウハウのシェアを堅苦しい手続きも手間もなく行うことができるこの環境は、理想的な環境であることは間違いないでしょう。
日本型組織の作り方は縦割り型でノウハウ共有がされず、結果的に無駄が生じやすいとよく議論に挙がるのを耳にします。
ボーダレス・ジャパンのノウハウ共有の具体的な仕組みと、それを下支えする分かち合い・助け合いの文化から我々が学べることが多くありました。
株式会社ボーダレス・ジャパンの概略
会社名 | 株式会社ボーダレス・ジャパン / BORDERLESS JAPAN CORPORATION |
設立 | 2007年3月 |
所在地 | ■東京オフィス〒162-0843 東京都新宿区市谷田町2-17 八重洲市谷ビル10FTEL : 03-5227-6980 ■福岡オフィス〒813-0034 福岡県福岡市東区多の津4-14-1TEL : 092-292-5791 |
資本金 | 1,000万円 |
決算日 | 2月末日 |
役員 | 代表取締役社長 田口 一成 代表取締役副社長 鈴木 雅剛 |
従業員 | 計1,287名(役員含む、2022年3月1日時点) |
会社HP | https://www.borderless-japan.com/ |