事業家集団・じげんに学ぶ、現場を離れても成長し続ける店を作るための経営哲学

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事業家集団・じげんに学ぶ、現場を離れても成長し続ける店を作るための経営哲学

毎日、仕込みに追われていませんか。 朝早くから市場へ行き、重い荷物を運ぶ。
開店前には掃除を済ませ、接客をこなす。 閉店後は深夜までレジ締めと事務作業。



多くの個人店主は、誰よりも働く「スーパー店員」です。 



しかし、ふと立ち止まって考えてみてください。
もし、あなたが明日から一週間、病気で倒れてしまったら。 その店の売上はどうなるでしょうか。

多くの店では、シャッターを閉めるか、 あるいは現場が混乱して売上が激減するはずです。 

それは、あなたが「店を経営している」のではなく、 「店という場所で作業をしている」からです。

今回、私たちが注目するのは株式会社じげん(ZIGExN)。 


東証プライム上場の、飛ぶ鳥を落とす勢いのIT企業です。
彼らは自らを「事業家集団」と定義しています。

一見、実体のないプラットフォームを営む、 遠い世界の巨大企業に見えるかもしれません。 

しかし、彼らの哲学には、私たち小さな店の経営者が、「作業員」を卒業するための知恵が凝縮されています。

以前、株式会社じげんに触れましたが、今回はもっと深堀りしました。
今回は、株式会社じげんの「事業家集団」としての考え方を筆者である私自身が実践した体験談にも触れました。

起業する前に、または立ち上げの真っ最中であるからこそ学んでおくべきことが多くあることを感じ取れるはずです。

前回の記事はこちら:
M&Aで志の高い仲間とともに発展する事業家集団~株式会社じげん

企業の哲学・コンセプト:すべては「負」の解消から始まる

じげんの核となるビジョンは、きわめてシンプルです。
それは、世の中に転がっている「負(不満・不便・不安)」を見つけ出し、 それをビジネスの仕組みで解決すること。



たとえば、転職を考えたとき。 あるいは、引っ越し先を探しているとき。
情報はネット上にバラバラに散らばっています。
「比較しにくい」
「探しにくい」
「選ぶのが不安」



そんな「不便」こそが、彼らにとっての宝の山です。



じげんは、それらの情報を一括で検索できる「仕組み」を作ります。 



ユーザーの「負」を解消し、選択肢を最大化する。
これが、彼らが稼ぎ続けている本質的な理由です。



これは店舗経営においても、商売の本質を突いています。
美味しい料理を出すことなど、現代では当たり前になっています。



その先にある「街の小さな不満」を見つけられていますか?
「あそこのカフェは美味しいが、いつも混んでいて座れない」
「この街には、夜21時以降にまともな食事ができる店がない」
「子連れで入りたいが、ベビーカーの置き場に困る店ばかりだ」



こうした「負」を一つひとつ拾い上げ、 それを解決する店作りをした瞬間。
あなたの店は、単なる飲食店や美容室ではなく、 地域に不可欠な「事業」へと昇華するのです。

仕組み・実践:全員を「経営者」に変える圧倒的な仕組み

じげんが「事業家集団」と呼ばれる理由。
それは、社員一人ひとりの「当事者意識」の高さにあります。

彼らの現場では、新入社員であっても、 「一事業の経営者」としての視点を求められます。 




そこで使われるのが「ユニットエコノミクス」という考え方です。
「一人のお客様を呼ぶのに、いくらコストがかかったか」
「そのお客様が、将来いくらの利益をもたらしてくれるか」
これらを、シビアに、かつ日常的に数値化しています。

多くの個人店主は「原価率」や「人件費率」には敏感です。 

しかし、「集客コスト」までスタッフと共有していますか。
「SNSの投稿一回で、何人の新規客が来たのか」
「そのお客様が、二回目に来店した確率は何%か」

これらの数字をスタッフ全員が把握し、 「どうすれば改善できるか」を自ら考える。
これが、じげん流の「事業家」の姿です。

事業家集団:なぜ「店長」ではなく「事業家」が必要なのか



ここで、じげんが謳っている「事業家集団」の本質について、さらに深く触れておきましょう。

彼らが定義する「事業家」とは、単に指示された仕事をこなす人や、店舗を管理する人を指す言葉ではありません。


じげんにとっての事業家とは、「社会の負(不満・不便・不安)をビジネスの仕組みで解決し、自走する収益モデルを創り出せる人」を指します。

じげんは、会社そのものを「事業家が育つためのプラットフォーム」と位置づけています。 一人ひとりが経営者として打席に立ち、自ら課題を見つけ、解決策を投じる。


この「意思決定の総量」こそが組織の強さであると、彼らは明確に謳っているのです。
だからこそ、じげんは特定の業種に固執しません。



不動産、求人、旅行……。

一見バラバラに見える領域で次々と成功を収められるのは、どの現場にも「負」を見つけて仕組み化できる、本物の事業家が育っているからです。

この視点は、私たちの店作りにおいても極めて重要です。
あなたが育てたいのは、マニュアル通りに動く「店員」でしょうか。
それとも、あなたの店のビジョンを共有し、自ら売上を作る「事業家」でしょうか。

じげんは、若手にどんどん「社長」の椅子を任せます。
M&Aで買収したばかりの、明日をも知れぬ会社の再生を、20代の社員に委ねるのです。
自分で決断し、失敗し、泥をすすりながら修羅場をくぐり抜ける。
その経験の積み重ねこそが、本物の事業家を磨き上げると知っているからです。

これをあなたの店に応用するなら、店主であるあなたが「教える」のをやめることです。 現場の小さな改善権限を、スタッフに思い切って渡してみる。
「この時間帯の売上を10%上げるには?」という経営課題を、あえて丸投げしてみる。
スタッフを信じて「意思決定の場」を提供し、彼らが自ら考え、動く土壌を作ること。
それこそが、じげん流の「事業家集団」への第一歩なのです。

自分の店に応用する視点:職人を卒業し、事業家として生きる

では、明日から具体的にどう動けばいいのでしょうか。
職人気質のオーナーが「事業家」へ脱皮するための、 3つの具体的なステップを提案します。

1. 「店主の勘」を「共通ルール」へと翻訳する



「背中を見て学べ」という時代は終わったように思えますが、人は姿勢を見ています。
しかし、店頭で仕事をするだけが事業家がやる仕事ではありません。
あなたが不在でも、スタッフが同じレベルで判断を下せる。
そんな「判断の基準」を店に埋める必要があります。



「このレベルの汚れなら、すぐ拭く」
「この表情のお客様には、このタイミングでお冷を注ぐ」
感覚的だったこだわりを、誰でも再現できるルールに変える。



じげんがプラットフォームで情報を整理するように、 店も「自動で質の高いサービスが出る状態」を目指すのです。

2. 近隣の店を「不満が溜まるプール」として観察する



競合店を「敵」として見るのはやめましょう。
代わりに「顧客の不満(負)が溜まっているプール」として見ます。



競合店に通うお客様が、SNSで何と呟いているか。
Googleマップのレビューで、何に不満を抱いているか。
その「負」を解消するサービスを、自店で提供する。
これだけで、広告費をかけずともお客様は流れてきます。

3. スタッフを「小さな経営者」として扱う



今日から、スタッフへの言葉を変えてください。
「皿を洗って」「掃除をして」という作業指示はやめます。
「この店のファンを一人増やすために、君なら今日何をする?」
と、経営課題を分け合うのです。



スタッフを「作業員」から「小さな事業家」へ昇格させたとき。 オーナーは初めて、現場の作業から解放されます。



そして、2号店の構想や、新しい収益源の構築といった、 「未来を創る仕事」に時間を使えるようになります。

「じげん」の哲学を現場でどう実践したか

ここまで、じげんの戦略的かつ組織的な強みについて解説してきましたが、ここからは、この「事業家集団」という哲学を、実際に店舗経営の現場に導入した筆者の経験をお伝えします。

私自身、かつては店舗経営において「経営者は誰よりも働き、現場で泥臭く汗をかくべきだ」という強い信念を持っていました。




トップ自らが最前線に立ち、献身的に働く姿こそがスタッフに伝播し、店に命を吹き込む唯一の正解だと確信していたのです。
典型的な「現場主義の職人オーナー」の思考でした。

しかし、じげんが掲げる「事業家集団」の哲学に出会った際、その前提が大きく揺らぐ衝撃を受けました。

経営者が全力で現場を牽引することは素晴らしいことですが、個人の根性論だけでは組織の成長には限界があります。


経営者の熱量やビジョンを、店主一人の抱え込みではなく、「仕組み(システム)」というパイプを通じて組織の隅々まで伝播させること。
それこそが、持続可能な経営の本質なのだと気づかされたのです。



具体的には、これまで聖域視していた店の財務数値をすべてスタッフに公開し、運営の意思決定権の一部を現場スタッフに委譲しました。



そして、私自身は現場に出る時間を意図的に削減し、その分を外の世界で
「店をより良くするための新たな外部連携や武器」
を探しに行く時間に充てたのです。



最初は組織が瓦解するのではないかという不安もありましたが、結果として起きたのは、予想を上回る組織の自律的な変化でした。



これまでトップの背中を見てきたスタッフたちが、今度は「自分たちの意志」で課題を見つけ、動き始めたのです。



私が現場で大切にしてきた「想い」が、数字や権限委譲という「仕組み」を通じて、彼ら一人ひとりに浸透していく感覚がありました。
その結果、店はオーナー一人の限界を軽々と超え、前年比120%という過去最高の売上を達成しました。


もちろん、すべてが順風満帆ではありませんでした。
仕組み化を急ぐあまり、数字を追求しすぎて店から温かみが消え、スタッフの顔が曇ってしまった時期もあります。

成功と失敗から学ぶ「事業家の心得」

記事の最後に、私がこの「事業家集団」の哲学から学んだ、 大切な教訓を整理しておきます。
✅ 成功から学んだこと:事業家の歩み

  • お客様の「面倒くさい」は、商売の種である お客様が口にする小さな愚痴や不便を見逃さないこと。 その解消を徹底すれば、安売り競争に巻き込まれることはありません。
  • 店主が現場を離れることが、組織の成長を加速させる オーナーが作業をやめることで、スタッフが育つ余白が生まれます。 そして、自分自身は「次の一手」を考える時間を手に入れられます。
  • 数字は、スタッフとの共通言語である 感覚で会話するのをやめ、数字を共有すること。 それがスタッフを「当事者」に変える最短ルートです。



❌ 失敗から学んだこと:職人の罠

  • 「自分がやったほうが早い」は、自分を殺す呪文である その一言を言った瞬間、スタッフの成長は止まり、 オーナーの自由は永遠に失われます。
  • ビジョンなき仕組み化は、店を冷徹な機械に変える 「なぜその数字が必要か」「誰を幸せにしたいのか」。 想いの共有を疎かにした仕組みは、スタッフの離職を招きます。



仕組みに「魂」を宿し、街に愛される事業を創る

「経営者は誰よりも働き、現場で汗をかくべきだ」
私が大切にしているこの信念は、じげんの哲学と出会ったことで、さらに強固なものへと進化しました。

かつての私は、一人で空回りしていたのかもしれません。
しかし今は違います。誰よりも働くオーナーの背中こそが、スタッフに「何のためにこの店があるのか」を語りかける最強のメッセージであり、仕組みという冷徹な機械に「魂」を吹き込む唯一の燃料なのだと確信しています。

「じげん」が謳う事業家集団とは、決してドライな効率化の集団ではありません。一人ひとりが「負を解決する」という使命に燃え、当事者として打席に立つ、きわめて熱量の高いチームです。

私たちの店も同じです。
店主が現場で誰よりも輝き、その情熱を「仕組み」というパイプを通じてスタッフに伝播させる。そうして育った「小さな事業家」たちが、自分たちの意志で店を良くしていく。
そのとき、店は店主一人の限界を超え、地域になくてはならない「生活のインフラ」へと変わるのです。職人としての誇りと、事業家としての視点。
その両輪が揃ったとき、あなたの店はあなたがいなくても光り輝き、同時に、あなたが現場に立つたびにさらなる熱を帯びる場所になるはずです。

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