スノーピークに学ぶブランドを育てるマーケティング戦略

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スノーピークに学ぶブランドを育てるマーケティング戦略


■ はじめに

近年、日本企業の中でマーケティングに成功している代表例として「スノーピーク」を挙げる人が増えています。


アウトドアブランドでありながら、アパレル、飲食、キャンプ場、ホテル、ギフト、地方創生などへ事業を広げ、「ライフスタイル企業」という独自のポジションを確立している点が特徴です。

特に注目されるのは、単なるプロダクト販売ではなく、「思想」「体験」「コミュニティ」という3つの要素を軸にブランドを構築しているところです。

本記事では、

 ・スノーピークとはどんな会社なのか

 ・どのようなマーケティング成功要因があるのか

 ・その戦略を飲食事業・ギフトショップに応用する方法

 ・応用する際のメリット・デメリット

を「実践者視点」で解説いたします。


飲食店運営者、ギフトショップオーナー、そしてコミュニティ型ビジネスを志す方にとって、実用的な学びとなる内容です。

1. スノーピークとはどんな会社なのか

スノーピークは、新潟県三条市に本社を構えるアウトドア総合ブランドです。
1958年に山井幸雄氏が創業し、現在は山井太氏(代表取締役会長)が中心となって企業を牽引しています。

■ スノーピークが特別な存在である理由

スノーピークは、単なるアウトドア用品メーカーにとどまりません。以下のように、多岐にわたる事業領域を展開しています。

 ・アウトドア用品(テント、ギア、焚火台など)

 ・アパレル(アウトドアとファッションの融合)

 ・キャンプ場(直営キャンプフィールド)

 ・ホテル事業(グランピング事業)

 ・飲食事業(Snow Peak Eat、Snow Peak Café)

 ・地方創生事業(自治体との協働プロジェクト)

これらの事業に共通しているのは、

「自然指向のライフスタイルを提案する」

という価値観です。

スノーピークの顧客は、単に商品を求めているのではなく、「自然とつながりながら暮らす生き方そのもの」を求めています。


この「生き方を提供する姿勢」こそが、スノーピークを独自のブランドへ押し上げています。

2. スノーピークのマーケティング成功ポイント

2-1. 「思想」がブランドの中心にある

スノーピークは、マーケティングの基本原則である「Why(なぜそれをやるのか)」から始めるスタイルを徹底しています。

■ スノーピークが掲げる思想

 ・人間性の回復

 ・自然指向のライフスタイル

 ・アウトドアを通じた人と人のつながり

 ・持続可能な社会への貢献

とりわけ「人間性の回復」という言葉には、スノーピークらしさが凝縮されています。


自然の中で火を囲み、仲間との語らいで心を整える。

その「本質的な体験」にこそ価値があるという考え方です。

このように、商品よりも先に“思想”が存在し、その思想に共感した人がファンとなり、長期的なブランド支持につながっています。

2-2. 「モノではなく体験」を売る戦略

スノーピークの最大の特徴は、体験をビジネスの中心に据えている点です。

■ 主な体験型施策
スノーピークは、直営キャンプ場での自然体験をはじめ、ユーザーがブランドの世界観を深く味わえる体験設計を数多く展開しています。代表的なのが、ファン参加型イベント「Snow Peak Way」。実際にユーザー同士が交流し、スタッフと直接つながることで、製品だけでは伝えきれないアウトドアの価値を共有できる場になっています。

さらに、店舗にはギアを実際に手に取り体験できるコーナーが設けられており、初心者でも自分に合ったスタイルを見つけやすい工夫がされています。また、アウトドアと「食」を掛け合わせた飲食サービスも展開しており、焚火や自然を目の前にした食体験を通じて、屋外で過ごす時間の魅力をより豊かに感じられます。

そしてスノーピークが力を入れるグランピング施設では、自然に溶け込むような没入型の宿泊体験が提供され、普段の生活では得られない「自然とつながるひととき」を存分に味わうことができます。

これらの体験によって、ユーザーはスノーピークの世界観に触れ、「このブランドと生きていきたい」という感覚を自然と持つようになります。

スノーピークがつくり上げた価値循環は、

体験 → 感動 → 世界観の理解 → 商品購入 → コミュニティ参加


という流れで構築されています。

これは現代マーケティングの理想形とも言えるでしょう。

2-3. コミュニティ × 会員制度の強さ

スノーピークは、コミュニティ戦略の成功例として非常によく研究されています。

■ コミュニティ施策

 ・Snow Peak Members(会員制度)

 ・Snow Peak Point Card

 ・Snow Peak Way(ユーザーイベント)

 ・地域と協働したローカルイベント

 ・スタッフとの信頼関係づくり

ユーザーを「商品購入者」ではなく、「ブランドの共創者」として扱うことで、強固なロイヤルティを生んでいます。
この仕組みによって、スノーピークは高いリピート率とブランド支持を維持しています。

3. スノーピークの戦略を飲食事業に応用する方法

飲食事業は、もともと体験価値と相性が非常に良い業種です。
スノーピークの戦略を取り入れることで、単なる飲食店ではなく「世界観を提供する店舗」へと進化させることができます。

3-1. 店の「思想」を明確にする

スノーピークが自然志向を掲げているように、飲食店にも「価値観」が必要です。

例としては、

 ・地産地消の推奨

 ・身体を整える食体験

 ・生産者への敬意

 ・心を解きほぐす時間の提供

 ・人と人が自然につながる空間作り

などが挙げられます。

「美味しい料理」だけでは差別化になりにくいため、

「何を大切にしている店なのか」を言語化することがブランド力を高めます。

3-2. コミュニティ型の飲食店にする

飲食店にコミュニティ要素を持たせると、リピート率が飛躍的に上がります。

この辺りは、以前の記事「スターバックスに学ぶ、体験を売るマーケティング戦略」の中でも紹介したリワードプログラムに近いものがあるかもしれません。

コミュニティ要素を持たせることで、顧客ロイヤリティを上げることに繋がっています。

■ 具体的な施策

店舗では、ワイン会や地域の食文化を紹介するテーマイベントが定期的に開催されており、来場者が新しい食の世界に触れられる機会が用意されています。

さらに、メンバーシップ制度を通じて常連客との関係を深め、継続的にブランドの価値を体験できる仕組みも整えられています。

また、生産者を招いた食事イベントでは、食材の背景やストーリーを直接聞きながら味わう特別な時間が提供され、参加者にとって「食の源流」を体験できる貴重な場となっています。

加えて、店舗限定のコミュニティナイトでは、ユーザー同士が交流し合い、店舗を中心としたコミュニティ形成が活性化していきます。

さらに、「食 × 学び」をテーマにしたワークショップも展開されており、料理の技術や食にまつわる知識を深めながら、体験を通じてブランドとのつながりをより強く感じられる内容になっています。

このように、多様な食体験とコミュニティ施策によって、ユーザーとの関係を豊かに育んでいるのが特徴です。

コミュニティを形成することで、「この店に行く理由」が料理以外にも増えるため、顧客との関係性が深まります。

3. 飲食事業でのメリット、デメリット



飲食事業において、独自の世界観をつくり込むことができれば、価格競争に巻き込まれにくくなり、ブランドとしての強みを発揮しやすくなります。また、コミュニティを育てることでリピート客が増え、店舗との関係性を深めながら長期的な売上につながる点も大きな魅力です。

さらに、世界観や体験価値に共感したユーザーによるSNSでの自然な拡散が期待できるほか、イベントやメンバー制度を活用することで客単価の向上も見込めます。こうした取り組みを継続することで、ブランドの思想が顧客に浸透し、時間をかけて確かなブランド価値が育っていくことがメリットとして挙げられます。

一方で、明確な世界観を伝えるためには、企画や演出などの労力が増えるという課題があります。

また、スタッフとの価値観共有や接客レベルの統一など、教育が必須になるため運営負荷が高くなる可能性もあります。さらに、体験型の店舗づくりを重視する場合、滞在時間が長くなり回転率が下がるリスクも考えられます。

加えて、ブランドの思想が曖昧なまま運営してしまうと一貫性を欠き、世界観が崩れやすくなる点もデメリットです。

また、体験価値やコミュニティ形成には時間がかかるため、立ち上げ初期はすぐに売上に結びつきにくい場合があることも留意すべきポイントです。

4. スノーピークの戦略をギフトショップに応用する方法

ギフトショップは「ストーリーの販売」に近い業態です。
その意味で、スノーピークの世界観戦略との相性は抜群です。

4-1. 「物」ではなく「価値観」を贈る

スノーピークのギフト商品が人気なのは、
「自然への憧れ」「丁寧な暮らし」といった価値観をそのまま贈れるからです。

ギフトショップで活かす施策としては、

 ・商品のストーリーをカード化する

 ・生産背景・作り手を見せる

 ・ブランドの大切にする価値観を掲示

 ・季節やシーンに合わせた「テーマギフト」を設計

などが有効です。

顧客は「何を贈るか」よりも、「どんな想いを贈るか」に価値を感じます。

4-2. コミュニティギフトの導入

ギフトという文化自体が人と人をつなぐ体験なので、コミュニティ形成と相性が良いです。

■ 具体的な施策

ギフトに特化した取り組みとして、まず「ギフトセレクト講座」の開催がおすすめです。

贈り物の選び方やシーン別の提案方法など、実践的な知識を学べる場を提供することができます。

さらに、ラッピングワークショップでは、包装のコツや魅せ方を体験しながら身につけることができ、参加者がギフト文化そのものを楽しめる機会となっています。

また、会員限定の先行ギフト販売を実施することで、特別感や優待感を醸成し、ブランドとの関係性をより深められる仕組みが整えられています。
加えて、顧客同士が自由に交流できるミニイベントも開催されており、ギフトをきっかけにしたコミュニティが形成されることで、ブランドへの愛着が育まれていきます。

これにより、ただのショップではなく、「贈る文化を育てる場」として機能します。

4. ギフトショップのメリット、デメリット



ギフトショップの大きな魅力は、ストーリーを付加することで高単価の商品でも受け入れられやすくなる点です。

贈り物という特性上、商品そのものの価値だけでなく、「その背景にある想いや物語」が購買理由につながりやすいため、世界観をつくり込むことで他店との差別化も容易になります。
また、ギフト需要は老若男女を問わず幅広いため、客層を広く獲得できることも強みです。
さらに、コミュニティ運営との相性が良く、ワークショップやイベントを通じて顧客との関係性が深まり、結果としてリピートが安定しやすいというメリットがあります。

一方で、ギフトショップには特有の課題も存在します。
まず、商品にストーリーを持たせるためには、調査・編集・表現といった時間と労力が必要であり、企画力が求められます。

また、店舗全体の世界観を統一し続けることは容易ではなく、少しのズレでもブランドの印象が崩れてしまう可能性があります。

さらに、商品選定を誤るとブランド価値が一気に弱まるリスクがあり、細心の注意が求められます。
大量販売には向かないため、売上をスケールさせるには工夫が必要であり、特に立ち上げ初期は収益化が難しい場合がある点もデメリットとして挙げられます。

5. スノーピークの本質は「思想 × 体験 × コミュニティ」

スノーピークのマーケティングから学べる最も重要な点は、「思想がスタートであり、商品はその副産物である」という考え方です。

■ スノーピークのブランド構造

 ・思想(Why)

 ・体験(How)

 ・商品(What)

 ・コミュニティ(循環の仕組み)

この順序でブランドを成長させていることが、スノーピークの独自性を作り出しています。

多くの企業が「何を売るか」から始めてしまう一方で、スノーピークは「なぜ売るのか」という根幹からブランドを構築しています。

そのため、ファンが自然と集まり、世界観を共有し、商品やサービスが選ばれるようになっています。

■ まとめ



スノーピークは、単なるアウトドアブランドではなく、「自然と共に生きる思想を提供するライフスタイル企業」です。

そのブランド形成には、

 ・思想の徹底

 ・体験価値の設計

 ・コミュニティマーケティング

 ・顧客との長期的な関係構築

という、現代ビジネスの成功要素がすべて含まれています。

そして、これらの戦略は飲食店やギフトショップ、さらにはコミュニティ型ビジネスや地域拠点づくりにも応用できます。

スノーピークの思想を取り入れることで、「モノを売る店」から「世界観を提供するブランド」へと進化できる可能性があります。

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