ダイソーのマーケティング戦略とは? 顧客起点で成長する理由を解説

#企業紹介

|

ダイソーのマーケティング戦略とは? 顧客起点で成長する理由を解説

1.ダイソーに学ぶ、顧客と価値を創る新しいビジネスモデル

― 世界5,670店舗・米国1,000店舗構想に見る成長戦略 ―

近年、小売業界では価格競争の激化や、商品・機能による差別化の限界が指摘されています。多くの企業が「安さ」や「スペック」で競争する中、持続的な成長を実現できている企業は決して多くありません。

その中で、100円ショップを展開するダイソーは、国内外で異例とも言える成長を続けています。2025年2月時点で、ダイソーは全世界5,670店舗、海外1,045店舗、26の国と地域に展開。さらにアメリカ市場では、2030年までに1,000店舗展開という中長期目標を掲げています。

このような成長は、単なる低価格戦略では説明できません。その本質は、「顧客との関係性を起点にしたビジネス設計」にあります。

本稿では、ダイソーの事例をもとに、これからの時代に求められるマーケティングのあり方について考察します。

2.商品ではなく「売れ続ける構造」を設計している

多くの企業は、「良い商品を作れば売れる」という前提でビジネスを設計します。しかし現実には、商品はすぐに模倣され、価格競争に巻き込まれるのが常です。

ダイソーが他社と一線を画しているのは、商品単体で勝負していない点にあります。
同社は約4万〜5万点の商品を扱い、さらに毎月1,000点以上の新商品を投入しています。



この圧倒的な商品数と更新スピードは、「売れる商品を作る」というよりも、「売れ続ける状態をつくる」ための仕組みです。



商品が売れるだけで終わるのではなく、顧客が使う → 新しい使い方が生まれる → その価値が共有される → 新たな需要が生まれる
という循環が設計されています。



つまりダイソーは、「商品」を売っているのではなく、「価値が拡張し続ける構造」を提供している企業と言えます。

3.3つのブランド戦略が生む「顧客接点の拡張」

近年のダイソーの成長を語る上で欠かせないのが、「複数ブランドによる戦略的な市場拡張」です。



現在、ダイソーは主に3つのブランドを展開しています。
・ダイソー(DAISO):100円中心の圧倒的コスパと商品数
・スタンダードプロダクツ(Standard Products):シンプル・高品質・やや高価格帯
・スリーピー(THREEPPY):可愛い・トレンド・女性向け雑貨

従来のダイソーは「安さ」を軸にしたブランドでしたが、ここには明確な限界もありました。



例えば、「もう少しおしゃれなものが欲しい」 「安すぎると品質が不安」「価格よりもデザインを重視したい」といったニーズには応えきれない側面があったのです。



そこで生まれたのが、新ブランドの展開です。スタンダードプロダクツは、「ちょうどいい価格と品質」をコンセプトに、300円〜1,000円前後の商品を中心に展開し、シンプルで長く使える日用品を提供しています。無印良品に近い領域を、より手頃に提供するポジションです。

一方、スリーピーは「かわいい」「トレンド」「ギフト需要」に特化し、若年層や女性を中心に支持を広げています。つまりダイソーは、 「安さだけのブランド」から「複数の価値軸を持つブランド群」へと進化しているのです。



この戦略により、価格帯・デザイン・用途といった異なるニーズを取り込み、顧客接点を大きく広げています。

4.顧客を巻き込む「共創型マーケティング」

この循環を支えているのが、顧客を価値創造に巻き込む「共創型マーケティング」です。

一般的な企業では、商品価値は企業側が設計し、広告や販促によって伝えます。しかしダイソーは、顧客の行動そのものを価値創造の起点としています。

特に重要なのが「ホンネデータ」です。

これは単なる購買データではなく、
・どのように使われているのか
・なぜその使い方になったのか
・どの場面で価値が生まれたのか

といった、実際の生活に根ざしたリアルな情報です。

例えば、本来の用途とは異なる使い方が広まり、それが新たな商品需要につながるケースもあります。

こうした価値は、企業側の想定だけでは決して生まれません。
顧客の行動を観察し、その意味を理解し、商品や売り場に反映する。
このプロセスこそが、ダイソーの競争優位を生み出しています。

5.グローバル展開を支える「現地適応力」

ダイソーの強さは、日本国内にとどまりません。

世界26の国と地域に展開しながら、各市場で支持を得ている背景には、「現地適応力」があります。

例えばアメリカ市場では、日本とは大きく異なる消費行動が見られます。

・住宅が広く、大型商品への需要が高い
・DIY文化が根付いており、実用性が重視される
・パーティー文化があり、イベント需要が大きい

このような違いに対して、商品構成や売り場、価格帯を柔軟に調整しています。

重要なのは、「成功モデルをそのまま持ち込まない」という姿勢です。
現地の顧客を観察し、使われ方を理解し、その結果をビジネスに反映する。これは、日本で培ってきた「ホンネデータ」の考え方と本質的に同じです。

つまりダイソーのグローバル戦略は、「商品輸出」ではなく「顧客理解の輸出」と言えるでしょう。

6.成長を支える裏側の経営設計

このようなビジネスモデルは、現場の工夫だけでは成立しません。

裏側では、極めてロジカルな経営が行われています。

特にアメリカ市場では、
・広大な国土に対応した物流網の構築
・人件費高騰への対応(省人化・効率化)
・データに基づく出店戦略

といった課題が存在します。

これに対し、配送拠点の最適化やサプライチェーンの見直し、AIを活用した在庫・シフト管理、セルフレジ導入などにより、効率的な運営体制を構築しています。

また、グローバル人材の育成や店舗マネジメント体制の強化も進められており、急速な出店を支える基盤が整えられています。

つまり、
表では「安さ・楽しさ」
裏では「データと再現性」



この両輪によって、持続的な成長が実現されています。

 7.営業現場における「顧客起点」への転換(実体験)

この考え方は、小売業に限らず、あらゆるビジネスに応用可能です。私自身の営業経験を振り返っても、その違いは非常に明確でした。

失敗例:「良いものを出せば売れる」と考えていた頃



成果が出なかった頃の私は、「良い商品・サービスであれば売れる」という前提で営業をしていました。価値のある商品を扱っているのだから、しっかり説明すれば伝わるはず。
お店に並べれば、必要な人が自然と手に取ってくれるはず。



そう考えていたのです。
しかし、実際には思うように売れませんでした。

商品自体には自信がありましたし、内容も決して悪くありませんでした。それでも、提案しても選ばれない、店舗に置いても動かない、という状態が続いていました。今振り返ると、その原因はとてもシンプルです。私は「商品起点」で考えており、「顧客起点」で考えられていなかったのです。

どれだけ良い商品でも、相手の状況やニーズとズレていれば、価値は伝わりません。
つまり、「良いもの=売れる」ではなかったのです。

成功例:「顧客から学ぶ」ことで売れるようになった変化

転機となったのは、「まず顧客を理解する」という姿勢に切り替えたことでした。

商品を説明する前に、徹底的にヒアリングを行うようにしました。

どんな課題を抱えているのか。
どこに無駄やストレスを感じているのか。
なぜ今の状態になっているのか。
本当はどんな状態を求めているのか。

こうした部分を、時間をかけて深く理解することに集中しました。

すると、不思議なことに、同じ商品でも「伝え方」と「提案の切り口」が大きく変わっていきました。これまで売れなかったものが、相手のニーズに合わせて提案すると自然と受け入れられるようになったのです。

さらに、店舗での販売においても同様でした。
ただ商品を置くだけでは動かなかったものが、実際にお客様の声を聞き、「どういう場面で使うのか」「どんな使い方をしているのか」を反映させていくことで、徐々に売れるようになっていきました。

ここで強く感じたのは、ダイソーの「ホンネデータ」と同じ本質です。

つまり、顧客のリアルな使い方や行動を観察し、その背景にあるニーズを理解し、
商品や提案に反映するこのプロセスこそが、成果を生み出すということです。ダイソーが顧客の使い方から新しい価値を見つけているように、営業においても、顧客の声や行動の中にこそヒントがあります。

気づいたこと



この経験から明確になったのは、うまくいかないときは「自分が売りたいもの」を起点にしており、うまくいくときは「顧客から学ぶ」ことを起点にしているということです。

自分が何を売りたいかではなく、 相手が何を求めているのか。

この視点に変わるだけで、提案の質も、結果も大きく変わります。結局のところ、成果を生むのは「良い商品」そのものではありません。顧客のニーズと結びついたときに、初めてその価値が発揮されます。

その意味で、営業もマーケティングも本質は同じです。自分の正しさを伝えるのではなく、顧客から学び、その声を反映する。このシンプルな姿勢が、結果を大きく変えていくのです。

8.マーケティングは「一方向」から「循環」へ

ダイソーの事例が示しているのは、マーケティングの本質的な変化です。従来は、企業が価値を作り、それを顧客に届ける「一方向型」のモデルが主流でした。

しかし現在は、顧客の行動 → 価値の発見 → 商品・売り場への反映 → 新たな体験の創出という「循環型」のモデルへと進化しています。

顧客の行動そのものが価値を生み、その価値が再び商品や体験に反映される。この循環があることで、改善スピードは加速し、顧客理解は深まり、結果としてブランドの競争力が強化されていきます。

ダイソーは、単なる低価格企業ではありません。世界5,670店舗という規模の裏側には、顧客との関係性を起点としたビジネス設計があります。顧客を観察し、学び、その声を価値に反映する。

このシンプルでありながら本質的なプロセスを徹底しているからこそ、グローバル市場においても成長を続けているのです。そしてこの考え方は、業界を問わず応用可能です。

これからの時代に問われるのは、

「何を売るか」ではなく
「誰と価値を創るか」

この視点を持てるかどうかが、ビジネスの未来を大きく左右するでしょう。

記事一覧に戻る

矢印
矢印