なぜ人は星野リゾートを選ぶのか? 駆け出しの事業家が学べる5つのエッセンス

#ケーススタディー

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なぜ人は星野リゾートを選ぶのか? 駆け出しの事業家が学べる5つのエッセンス


はじめに

私たちは普段、小さなお店を運営したり、開業を準備したりしながら、
「もっとお客様に喜んでもらうにはどうすればいいか?」
この問いに向き合い続けています。

そんな私たちとはまったく違うスケールで事業を展開しているのが、星野リゾートです。

日本を代表するリゾート企業であり、
「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO」など、多彩なブランドを展開しながら、
100年以上にわたって“体験”を提供し続けてきました。

一見すると、旅館・ホテル業界の話は、自分たちの小さなお店とは遠い世界に思えます。
しかし、その哲学を深く見ていくと、
私たちのような個店でも“すぐに使える学び”が驚くほど詰まっています。

ここでは、星野リゾートに息づくエッセンスを、
「駆け出しの事業家が実践できる形」に分解してお届けします。

1.企業の哲学:商品ではなく“体験”を売る



星野リゾートの哲学をひと言で表すなら、
“滞在そのものをデザインする企業”です。

1914年、軽井沢で温泉旅館としてスタートした同社は、
「宿泊を提供する場所」から、
「滞在の価値を生み出すプロデューサー」へ進化してきました。

その核には、
「地域の個性=体験価値」という発想が流れています。

軽井沢なら自然。
青森なら文化。
富士なら食と景色。

「地域そのものがブランドであり、商品である」という考え方です。

だからこそ、星野リゾートの宿には“同じ体験”がありません。
土地の魅力を掘り起こし、それを滞在の物語として編み込む。

“場所の価値を体験価値へ変換する”
これが星野リゾートの強さであり、ブランドの核となっています。

2.現場の仕組み:意図された体験を演出する仕掛け

星野リゾートの体験づくりは緻密です。
とくに、以下の3つは小規模店舗にも応用可能です。

①空間に「物語」を宿らせる

建物のデザイン、照明、香り、音、導線。
そのすべてが「伝えたい世界観」から逆算されています。

例:
 ・星のや京都は“水辺の私邸”がテーマ
 ・「界」ブランドは“ご当地文化”を空間・料理・工芸に反映

空間そのものが、ひとつのストーリーを語っているのです。

②スタッフが“世界観の案内役”を演じる


スタッフはただ丁寧に接客するだけではなく、
ブランドごとの“役柄”があります。


界の若女将のような案内。
OMOの街ガイドのような軽やかさ。

接客=物語の演出。
だから印象に残り、口コミが広がります。

③地域を“アクティビティ”へ再編集する


地元の自然、音、祭り、食、職人。
地域に眠るものを、そのまま滞在の体験に変えています。

例:
 ・早朝の森の散策ツアー
 ・地元工芸のワークショップ
 ・旬食材に合わせた季節イベント

地域と宿の境界を消すことで、満足度が自然と高まる仕組みを作っています。

3.小さな店への応用:今日からできる実装ヒント

旅館と飲食店・小売店は全く別の業種。
そう思われるかもしれません。

しかし、星野リゾートの思想は、小さな店にこそフィットします。

①“体験の流れ”を設計する

まずは、お客様が入店してから帰るまで、
どのような流れで時間を過ごすのかを一度すべて書き出してみます。

その中で、
「この瞬間に一番喜んでほしい」というポイントを明確に決めます。

そして、その瞬間を成立させるために、
どんな言葉をかけるのか、
どんな動きをするのか、
どんな空間で迎えるのかを具体的に設計していきます。

体験は偶然ではなく、
意図してつくることができます。

②空間の統一感を整える


空間づくりでは、
照明、BGM、香り、ディスプレイといった要素を
感覚任せにせず、意図をもって選びます。

実際に来店しなくても、
Instagramに並ぶ写真を見るだけで、
「この店はこういう世界観なんだ」と伝わる状態を目指します。

それだけで、
店の印象はぐっと強く、記憶に残りやすくなります。

③接客を“役柄”として考える


接客を、
単なる対応業務として捉えないことも大切です。

店主は、物語を語る存在。
スタッフは、世界観を案内する役割。
商品説明は、スペックではなく物語の紹介。

そう考えるだけで、
接客の質は大きく変わります。

接客そのものが一つの作品になると、
共感したお客様が自然とファンになっていきます。

④地域の価値を取り込む


地域の価値は、
大きな資源である必要はありません。

たとえば、
地元食材を一つ取り入れる。
近所の職人や店舗とコラボする。
地域の季節イベントと連動したメニューを用意する。

こうした小さな取り組みの積み重ねが、
「この場所ならでは」の体験をつくっていきます。

⑤顧客の“言葉にならないニーズ”を観察する


お客様が本当に求めているものは、
必ずしも言葉として表に出てくるとは限りません。

目線の動き。
表情の変化。
行動のスピード。
手の動き。

こうした細かな反応には、
多くのヒントが隠れています。

これらはすべて、
お客様の本音を映し出す
「無言のサイン」です。

観察することで、
次の体験設計につながっていきます。

4.筆者の体験談:体験を意識した瞬間、店が変わりはじめた



私たちの店舗でも、
星野リゾートの考え方をヒントにしたことがあります。

ある時期、
商品の魅力を一生懸命説明しているのに、
お客様の反応が薄いことが続いていました。

そのとき気づいたのは、
「スペックだけを説明していた」という事実でした。

そこで説明の軸を変えました。

「この商品が生まれた背景」
「つくり手の想い」
「どんな未来が手に入るのか」

すると、お客様の表情が変わり、
質問が増え、購入率も上がりました。

一方で、情報を盛り込みすぎてくどくなる失敗も経験しました。

その失敗から、
「体験は足し算より引き算」
だと学びました。

伝えるべき物語を絞ったとき、
店の空気が軽くなり、お客様の滞在が心地よいものになっていきました。

5.教訓リスト:この記事から持ち帰ってほしいこと



✅成功から学んだこと

  • 体験は「設計する」ことで価値が高まる
  • 商品より“物語”を伝えるとファンが生まれる
  • 空間と接客の統一が満足度を底上げする
  • 地域の個性を味方にすると唯一のブランドになる



❌失敗から学んだこと

  • 説明過多は体験を重くする
  • 世界観を作り込みすぎると自己満足になる
  • 役柄のない接客では世界観が崩れる



星野リゾートから学べることは、

「特別なことをしている」という話ではありません。

むしろ、

当たり前のことを、徹底的に考え、徹底的に設計している

その積み重ねです。

大きな資本がなくても、

有名なブランドでなくても、

体験の質はコントロールできます。

どんな空間で、

どんな言葉で、

どんな気持ちになって帰ってもらうのか。

それを意識しはじめた瞬間から、

事業は「売る場」ではなく、

選ばれる場へと少しずつ変わっていきます。

星野リゾートのやり方を真似る必要はありません。

けれど、その考え方を自分たちのサイズに落とし込むことはできます。

今日の営業で、

ひとつだけでも「体験」を意識してみる。

その小さな一歩が、

未来のファンをつくるきっかけになるのだと思います。

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