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老舗なのに、なぜ尖っている?中川政七商店の逆張り経営
老舗なのに、なぜ尖っている?中川政七商店の逆張り経営
私たちが「中川政七商店」と聞いて思い浮かべるのは、
きっと「丁寧な暮らし」や「きれいな生活雑貨」ではないでしょうか。
けれど、この会社の本質は、
そうした“雰囲気の良さ”だけでは語れません。
中川政七商店は、1716年創業の老舗でありながら、
日本の工芸を「文化」ではなく産業として成立させることに、本気で向き合ってきた企業です。
一見すると、
小さな店舗経営やこれから開業する私たちとは、距離があるように見えるかもしれません。
でも実は、
小さな店だからこそ、その考え方が効く。
この記事では、中川政七商店の哲学と仕組みを分解し、
私たちの店に持ち帰れる形に翻訳していきます。
1.企業の哲学・コンセプト

中川政七商店の中核にあるメッセージは、とてもシンプルです。
「日本の工芸を元気にする」
ここで注目したいのは、
「守る」「残す」という言葉が、前面に出てこないことです。
多くの老舗や地域産業は、
文化の保存や職人支援を掲げます。
それ自体は、とても正しい姿勢です。
ただ、守るだけでは続かない。
続かなければ、文化ごと消えてしまう。

中川政七商店は、
工芸を情緒ではなく、構造で支える道を選びました。
原価、流通、価格、売り場。
それらを現代の基準で組み直し、
・職人は「つくる人」
・商店は「売れる形にする人」
と役割を分ける。

この割り切りが、
300年以上続きながらも、ベンチャー気質を失わない理由だと感じます。
2.仕組み・実践
2-1.企画×製造×販売を一気通貫で持つ
中川政七商店は、
自社で商品を企画し、職人と協業して製造し、
直営店やECで販売しています。
つまり、
「作ったから売る」
ではなく、
「使われる未来から逆算して作る」。

・誰が使うのか
・どんな暮らしの中で使うのか
・どんな気持ちになってほしいのか
この問いを立ててから、商品が生まれています。
無印良品に近い構造ではありますが、
中川政七商店は「日本の工芸」に一点集中している。
この集中が、
世界観のブレなさを生んでいます。
2-2.世界観を“言葉”ではなく“運用”で揃える

店舗に入ると、どの店でも空気が似ています。
余白の取り方。
商品の並び。
素材感。
説明の語彙。
これはセンスの問題ではありません。
・何を置くか
・何を置かないか
・どう説明するか
この判断基準が共有されているから、揃う。
世界観とは、
雰囲気ではなく、
日々の判断の積み重ね。
そう教えてくれる売り場です。
2-3.「売る」で終わらせない、産地支援という仕組み
中川政七商店は、
自社商品の販売だけにとどまりません。

全国の工芸メーカーや地場産業に対して、
・商品開発
・ブランド設計
・価格戦略
売り場づくり
まで踏み込む、実践型の支援を行っています。
特徴的なのは、
自分たちが実際に売ってきた「型」を渡していること。
理論ではなく、現場で検証された方法だけを共有する。
ここが、「ただの良い雑貨屋」と決定的に違う点です。
3.自分の店に応用する視点
「うちは工芸じゃないから関係ない」
そう思ったら、少しもったいないかもしれません。
私たちが学ぶべきなのは、
商品ジャンルではなく設計思想です。
もし、小規模店舗で取り入れるなら、
次のような順番が現実的です。
・誰の暮らしを良くする店かを、あえて絞る
・商品を「機能」ではなく「使用シーン」で説明する
・値引きの代わりに、選ばれる理由を言葉にする
・置かない商品を先に決める
・棚を増やす前に、並べ方の型を決める
中川政七商店がやっているのは、
続くために、選択肢を減らすこと。
小さな店ほど、この考え方は効きます。
4.筆者の体験談(実践・成功・失敗)
4-1.実践してよかったこと
私たちが一度うまくいったのは、
「置く理由を説明できない商品」を、思い切って外したときでした。
売上が怖くて、商品を増やしていた。
でも増えるほど、店の輪郭はぼやけていきます。
商品点数を減らし、
「この店は、こういう人のための場所です」
と言えるようにした結果、
選びやすさが生まれ、
リピートにつながりました。
4-2.うまくいかなかったこと
逆に失敗したのは、
世界観“っぽさ”だけを先に真似したときです。
什器や並べ方を整えると、
一時的にはそれらしくなる。
けれど、判断基準がないと、
数週間で元に戻ってしまいます。
見た目より先に、
判断の軸をつくる必要がある。
これは、中川政七商店から学んだ
一番大きな気づきでした。
5.教訓リスト
✅成功から学んだこと
・世界観は、センスではなく判断基準でつくれる
・商品数よりも、選びやすさが売上をつくる
・値引きしないためには、理由の言語化が欠かせない
❌失敗から学んだこと
・見た目だけの模倣は、必ず崩れる
・「何でも置く」は、「何の店か分からない」に直結する
・短期売上を追いすぎると、ブランドの濃度が薄まる
6.まとめ
中川政七商店を見ていて感じるのは、
特別なことをしているようで、実はとても地に足のついた経営だということです。

・流行を追いすぎない
・無理に広げない
・値引きでごまかさない
その代わりに、
・誰のための店かを決める
・売れる形を先につくる
・判断基準を揃え続ける
この積み重ねを、300年近く続けてきた。
だからこそ、
「雰囲気がいい店」ではなく、
「続いている店」になっているのだと思います。
小さな店舗経営では、
どうしても目先の売上や集客に意識が向きがちです。
でも中川政七商店の事例は、
こう教えてくれます。
続く店は、
運やセンスではなく、
構造でつくられている。
私たちの店でも、
すべてを真似する必要はありません。
ただ一つ、
「何を増やすか」より先に、
「何をやらないか」「何に絞るか」を決める。そこから始めるだけでも、
店の輪郭は、確実に変わっていくはずです。
